これは、インドに限らず、職人の世界ではどの国もそうかもしれません。
私はお父さんのお店では、お父さんやおじさんに仕事を教えて
もらいました。具体的には包丁の使い方から始まって、
この食材にはこのスパイスが合うとか、この料理の作り方のコツは
この作業だ、というような内容です。
ところがですね、
タージグループの厨房では、料理は一切教えて
もらえませんでした。昔風に言えば、技術は盗めということ
なんでしょうかね。
特に料理人の世界では、年齢はあまり関係なくて、
オーダー通りの料理をおいしく作ることができれば、
昇格できるわけですから、厨房ではみんながライバルなんですね。
ですから、シェフのアシスタントをしていた見習い時代などは
「肝心なポイント」に来ると、シェフは「アレ取ってきて」
のような用事をわざわざ頼むわけですよ。
そして「肝心なポイント」は絶対に見せてくれない。
勿論、教えてもくれない。
私の場合は、親がニューデリーでもそこそこ有名なレストランを
経営していたのでなおさらガードが固かったですね。
シェフによっては、自分のレシピを盗んで親に教えるんじゃないか
と思っていた人もいると思います。なにしろ私のニックネームは
「
シアルコッティの息子」でしたから。
そんなわけで、できあがった料理から自分でいろいろ考えて、
何度も失敗して自分流のやり方を会得するほかなかったです。
仕事を終えて家に帰ってから、家族に料理を作って
毎日復習しました。家族は私の料理を食べられるので
喜んでいましたが、私は試行錯誤の毎日でした。
様々な修行の末に私はシェフになりました。
■■■ 仕事は教えてもらえない番外編 インド料理教室 ■■■
今では、
インド料理教室をレストランの厨房で開催している私。
講師をやることになったキッカケはレストラン勤務をしていたときに、
会社からカルチャーセンターの講師をするように業務命令が
あったからです。
本音は「私が人生をかけて手に入れた方法を、そんなに簡単に
人に教えられるわけなかろう!」でした。
そんなわけで、不本意ながら始まった講師業だったわけですが、
今は別の心持ちで楽しくやっています。
それはなぜか、、、
もし秘伝のインドカレーの作り方を、そのままそっくり
伝えたとしても、私の作るのと同じようには簡単にはできない
ということ。
ある意味「本物のプロのレシピ」というのは
レーシングカーみたいなもので
テクニックのある人やプロがうまく運転するならば速く走れるけれど、
一般の方には乗りにくいことこの上ないものだったるするわけです。
ハンドルにも遊びがないですから、すぐコースアウトしてしまいます。
ヘタするとエンジンすら始動できなかったりする恐れもあります。
というわけで、私が現在ご提供するインド料理の作り方は、
カローラぐらい身近で、リーズナブルなもの。
ガソリン代もあまりかからないし、もちろんオートマなので
エンストもしません。車庫入れも簡単ですよ!
そのようなレシピを考案するのにとても魅力を感じています。
手順通り作れば、失敗もなくおいしいインドカレーを作ることができます。
それは、創造的な仕事なのでとても楽しいです。
⇒
私の紹介するインド料理